義母がふとキッチンから声をかけてきた。
「バナナジュース、いる?」
あたたかい声だった。
でもその瞬間、私の頭の中ではちょっとした葛藤が始まる。
(あぁ…さっきコーヒー飲んだばかりなんだけどな)
正直、いらないなと思った。でも「いらないです」とは言えなかった。
義母のやさしさがわかるからこそ、なおさら。
そんな空気を察したのか、すかさず義父が後ろから一言。
「おいしいよ」
ああ、もうこれは断れない(笑)。
そのまま半ば強制的(?)に手渡されたバナナジュース。
私はそれを2階に持ってあがって、家族にもすすめてみた。
が、誰も飲まない…。
残すわけにはいかないので、仕方なく私が半分をゴクリ。
残りは娘に「どう?おいしい?」と渡してみた。
「おいしー」と言っていたけど、気づけばコップには残ったまま。

夕方、夕飯の準備で1階に降りると、義母から声がかかる。
「バナナジュース、どうだった?」
「おいしかったです!」と即答した私。
でも続けて来た質問が地味にプレッシャー。
「パパ(夫)は飲んだ?」
……見向きもしなかったとは言えない。
でも「飲んだ」とはウソになる。
「バナナ、ちょっと苦手みたいでダメでした」と濁す私。
すると義母、「なんでおいしいのに飲まないんでしょうね」と少し残念そう。
なので、「ほんとですよね、もったいない」なんてフォローも加えておいた。
ふぅ…。気を遣うなあ。
義母は、わざわざミキサーを出して、みんなに飲んでもらいたかったんだろうな。
そう思うと胸がちくっとする。
でもね、お義母さん。
人には好みもあれば、タイミングってものもあるんです…。
残った冷蔵庫のバナナジュース。
お風呂上がりに、私がちゃんといただきました。
食べ物は粗末にしちゃダメだから。